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設立趣旨
 この特定非営利活動法人は、まちづくりをメイン・テーマとして活動しようとするものである。

 まちづくりとは、明確な目標の下に地域の特性に基づいた、長期を見通した戦略性を持って、地域の新しい価値を将来に向かって創り出してゆく作業である。それは、時代の大きな変化や予測できない問題の発生にも柔軟に対処してゆける弾力性を持って地域の持続可能性を確保し、地域固有の質の高い共通・共同の資産を長い時間をかけて磨き、蓄積していくことであり、その根底には自治体や市民の中に共通の考え方や生き方として、まちづくりの理念や思想を基本に持つことを必要とする。

 このようなまちづくりには、地域の自治体や市民が、長期的かつ総合的な視点に立って自分たちの生活を支え、より便利に、より快適に、より人間らしく生活してゆくための共通・共同の資産を、地域内にある自然、歴史、伝統、文化、産業、技術、エネルギーなどさまざまな人的、物的、文化的資源を発掘し、生かし、組み合わせながら、創り出していくことが必要となる。

 この共通・共同の資産には、目に見える美しい自然景観や歴史的な街並み、共同で利用できる公共交通機関や上下水道などもあれば、目に見えないが住民がお互いに守るべきルールとしての条例や協定、また地域の誇り、愛着、連帯感などの共通の意識を醸成できる祭やイベントなども含まれる。行政施策の企画・立案や政策効果、事業効果の事前・事後評価を行うための基礎的情報としての各種統計や、まちのセンターとしての自治体も共通・共同の資産といえよう。まちづくりが成功するか否かは、地域固有の質の高い共通・共同の資産を持続的に構築してゆけるかどうかにかかっている。

 翻って、現代の地域社会をとりまく経済社会環境を見ると、少子高齢化による人口減少や国・地方を通じた厳しい財政状況が、地方都市を中心とした地域に出口の見えない閉塞感を与えている。その一方で、IT革命により、国民国家という経済の基本単位が解体され、そのベクトルは同時に世界化と地域化に向かっており、各地域は生き残りをかけた、世界的規模の激しい地域間競争に晒されている。このように、各地域は、それぞれの地域社会を持続可能なものとするための人口の定住・少子化対策、産業の誘致・育成による雇用機会の創出、そして市民や民間団体などとの協働による財政再建などさまざまな難題を抱えているのが現状である。さらに、人類の生存をも脅かす地球温暖化というグローバルな問題に対しても、地域独自の適切なエネルギーシステムという共通・共同の資産を構築し、また同時にエネルギーを大切に使う生活文化を創造していくことも強く求められている。

 それゆえ、このような厳しい財政状況や地域間競争の中にあっては、他地域と比較して劣っている面を改善する「問題解消型」のまちづくりよりも、他地域と比べ優れている面を発見し、それを地域の主体的な創意と工夫によってさらに伸ばすという「個性伸長型」のまちづくり、つまり地域固有の質の高い共通・共同の資産づくりが強く求められている。また、そのためには、まちづくりのセンターとしての自治体が有効に機能し、住民にはまちづくりに参画する、責任ある市民へと意識と行動を高めるための支援や、次代のまちづくりを担うリーダーの育成が求められている。加えて、今日の自治体行政は、地方分権化の推進と財政難から公共サービスのアウトソーシングを志向しているが、それらの公共サービスを引き受ける民間企業やNPOを、またこれと併行してそれらの仕組みや履行内容を適切に評価し、公共サービスの質や価格を監視する公正中立な第三者機関としてのNPOなどを、それぞれ地域の中で育成することも要請されているといえよう。

 そこで、このような現状と問題意識を踏まえ、社会工学、地域政策、都市計画、法制度、行財政、人口、健康・福祉、環境・エネルギー、情報技術などの各分野で蓄積された各種の知的成果に加えて、各地域の歴史的・文化的背景を持つ匠の技術や生活の知恵を、それぞれの地域が直面する諸問題の総合的な解決のために広く活用するなど、社会の要請に応えて生かしていく機会を創出することは、今日の緊要な課題であると強く認識するものである。また、そのような視点から、まちづくりに欠かすことのできない総合的、体系的視野と高度な知識・技術を有する有識者等の専門家が、お互いに協力して、まちづくりに関して幅広い分野で各種の支援活動を行うことは、個々の地域社会のみならず、我が国社会全体の発展にとっても極めて有意義なことである。

 よって、ここに我々有志は、特定非営利活動法人としての「社会工学研究所」を設立し、情熱と意欲ある多彩なまちづくりの専門家を募り、非営利団体として、現在及び将来の地域社会が抱えるさまざまな歪みや諸問題の構造を解明し、望ましい未来への針路とその道筋を提言するとともに、その成果や提言を生かしたまちづくりの実践、施工活動を通じて、豊かで魅力的かつ健全な地域社会と生活文化の創造に貢献しようとするものである。また、このような活動を通じて、我々は、次代の地域社会を担うまちづくりのリーダーやNPOの育成、まちづくりの施策や技術の国際協力、等々広く地域社会、国際社会の公益に寄与することをも目指すものである。